ユタ州タビオナにあるスカイライダー野生農牧場で、ワクワクする体験がはじまっています!
農牧場は、ドゥーシェイン川が流れる標高2000メートル付近から山頂にいたる3000メートル付近にまで広がっています。この1800ヘクタールの理想郷を通じてヤング・リヴィング・ファミリーに提供できるものはないかと、事業活動から会員向けのリトリートにいたるまであらゆる可能性を検討するうちに、”ヒトツブコムギ”が浮かんだのです。果たして標高2050メートルのこの土地でうまく栽培できるかどうか、検討してみることになりました。
まずは40ヘクタールの土地で種植えと栽培の実験です。通常ヒトツブコムギの種植えは晩秋が最適とされていますが、晩秋の雨で収穫時期がずれ込んだことから、5月にフランスから種を取り寄せ、春植えで実験してみることにしました。
私は大きな期待を抱きながら、畑の様子をずっと見守っていました。ヒトツブコムギは珍しい品種です。乾燥地の穀物とされているため、その生態に惑わされる人も多いのです。種植えから7日後、ついに地面から芽を出し、その後は凄まじいスピードで10~15センチまで成長しましたが、やがてピタリと止まってしまいました。しかし、動きが鈍ったかのように見える時期こそ、その後の成長に必要なある現象が進行しているのです。
二酸化炭素を十分に取り込み、太陽の電磁エネルギーを根に送ることで、成長サイクルの第3期(分げつ期)に根を地下深く成長させるための養分を蓄えているのです。地面の中では着々と成長が進んでいます。
十分な深さまで根を伸ばしたヒトツブコムギは、いよいよ地上へと丈を伸ばしていきます。ある朝に畑に出てみると、一晩で5センチも伸びている姿に驚かされました。穂軸は日ごとに大きくなり、穀粒の赤ちゃん誕生に向けて着々と準備が進められます。
日ごとに丈を伸ばす姿を見て、私は判断が正しかったことを確信しました。7月には90センチ、8月中旬には私の肩の高さにまで成長しました。
この畑で採れる数百トンの小麦が世界中の人々の食卓に運ばれると思うと胸が熱くなりました。ハイブリッド品種に頼ることなく、安全で栄養価が高い穀物を選択することができるようになるのです。
収穫の最適時期を決定するうえで、穀粒の成長と成熟に関する3つの段階に注意する必要があります。
第1段階:<乳熟期>穀粒の形成が始まり、粒を押しつぶすと白いミルクのような液状になる。
第2段階:<黄熟期>穀粒がしっかりと形成され、先端の部分が黄色っぽく変化する。
穀粒の成長が終わると、雨風や刈り取り機に触れて落下するようになります。刈り取りは黄熟期に開始し、刈り束はティピー(テントに似た先住民の移動用住居)の形に立てて並べ、風で飛ばされないようにします。こうすることで、雨や露が降り、地面に水が流れてもカビが発生しないようにします。
7~10日後、穀粒の最終段階となる<成熟期>にあたる第3段階に入ります。穀粒は石のように硬くなり、外皮を取り除く脱穀の準備が整います。
刈り束を地面に立て、雨や露にさらしている間に、もう1つの現象が起こります。日々の日照によって露が蒸発し、これが穀粒の酵素を刺激して熟成を促すため、人間や動物が食べたときに容易に消化ができる「前消化」の状態を生み出すのです。
今日のハイブリッド穀物は、効率を重視した近代的な収穫と脱穀が行われているため、消化が難しく様々な問題を引き起こしています。このような収穫方式は、大自然に育まれた生命力までもそぎ落とす結果となり、人々の健康を阻害しかねないことから、「お化け小麦」とも呼ばれています。
刈り取りからおよそ10日後、脱穀機にかけて製品の製造工程に送ることになります。収穫した穀物の一部は、次の種植えに使われます。
新しい会員の皆さまはこのヒトツブコムギについてご興味をお持ちのことでしょう。私の執筆した本、「Ancient Einkorn, Today’s Staff of Life(古きよきヒトツブコムギ、今日の生命の糧)」をぜひともご覧いただき、知識を深めてください。