【コンプラ知恵袋】
中部経済産業局は2025年3月4日、連鎖販売主催企業S社に対し、18か月間の勧誘活動・新規契約締結の停止処分、並びに、再発防止を講じコンプライアンス体制を構築する指示を行ったことを公表しました。
1.氏名等の明示義務に違反する行為(統括者の名称、勧誘目的及び商品の種類の不明示)、及び勧誘目的を告げずに公衆の出入りしない場所における勧誘行為
「令和4年12月から令和5年2月までの間に、勧誘者Zは消費者Aに対しLINEで、「ボウリングするんですけど来ませんか」と告げ、ボウリング場に来るように求めた。
勧誘者Zはボウリングを行った後、「この後いつも借りている場所で何人か集まって遊ぶんですけど来ませんか」などと告げた上で、S社の事務所に連れて行った。
この時点までに、勧誘者Zは消費者Aに対し、特定負担を伴う取引について勧誘をするためのものであることを告げていなかった。
S社の事務所において、勧誘者Zは消費者Aに対し、「友人などを会員になるよう誘って、その入会した人数に応じて報酬が貰えるという仕組みのビジネスなんだ」などと告げて勧誘をしたが、その勧誘に先立って、勧誘者Zは消費者Aに対し、S社の名称、特定負担を伴う取引についての契約の勧誘が目的である旨及び当該勧誘にかかわる商品の種類を告げていなかった。」
2.氏名等の明示義務に違反する行為(統括者の名称、勧誘目的及び商品の種類の不明示)及び迷惑を覚えさせるような仕方で勧誘をする行為
「令和5年6月から同年8月までの間に、勧誘者XはS社の事務所において消費者Bに対し、「ネットワークビジネスはね、会員になって、友人をどんどん紹介すれば、紹介して入会した人数に応じて報酬が貰えるという仕組みのビジネスなんだ」などと告げて勧誘をしたが、その勧誘に先立って、勧誘者Xは、「こんばんは、Xといいます」などと告げたのみで、消費者Bに対し、S社の名称、特定負担を伴う取引の契約締結について勧誘をする目的である旨及び当該勧誘に係る商品の種類を告げていなかった。
消費者Bは、「やめときます」、「つぎ込んだお金に見合った儲けは見込めないと思います」などと本件連鎖販売取引に係る契約を締結しない旨の意思を表示したにもかかわらず、勧誘者Xは、消費者Bに対し、「続けていれば必ずリターンがある」、「絶対にやったほうがいい」などと告げた上、午後11時30分頃から日付をまたいだ翌日の午前3時頃までの深夜の不適当な時間帯に約3時間半という長時間にわたり勧誘を継続し、消費者Bは本件連鎖販売取引に係る契約を締結した。
1.「いきなり」の勧誘はNG(特定商取引法第33条の2)
連鎖販売の内容は複雑であり、消費者は勧誘者に比べるとその情報量、知識、交渉力において格差があるため、勧誘者から事前に情報を与えられず「いきなり」勧誘を受けたとき、冷静に判断する余裕がありません。
勧誘者の言いなりに契約したり、あるいは、簡単に儲かると誤認して不要な製品を買ってしまい、消費者にとって不利益なことが起こります。
格差を是正する目的で制定された特定商取引法は、勧誘者が消費者に「いきなり」勧誘することを禁止し、勧誘に先立って「連鎖販売主催企業の名称、特定負担がある契約を勧誘することが目的であること、紹介する商品の種類」を告げる義務を定めています。
さらに、勧誘目的を告げずに公衆が出入りしない場所(S社事務所など)で勧誘することも禁止しています。
その理由は、密室の取り囲まれるような状況で「いきなり」勧誘されると、消費者は自分の意思で冷静に判断ができなかったり、相手に対して拒否することが難しくなるからです。
2.迷惑を感じさせるような方法で勧誘することはNG(特定商取引法第38条第1項第3号)
消費者が「やめときます」、「つぎ込んだお金に見合った儲けは見込めないと思います」などと契約しない意思を表示したにもかかわらず、勧誘者が「続けていれば必ずリターンがある」、「絶対にやったほうがいい」などと告げて、深夜長時間にわたって消費者が契約するまでしつこく勧誘したことは、迷惑行為として特定商取引法はこれを禁止しています。
勧誘者は消費者が契約しない旨の意思を表示したとき、その意思を尊重しなければなりません。消費者の自由意思を無視して、しつこく迷惑のかかる勧誘を続けると消費者に不快感を与えトラブルに発展します。
3.違和感が反発を生む
人は違和感を感じる人に対して差別や反発を感じると言われています。会員の皆様は勧誘に慣れてくると相手が拒否する壁を取り除くことはそんなに難しいことでないかも知れません。
しかし、一生懸命に会社やパートで働いている人や主婦にとって、「簡単に収入が入りそうなボーナスプランの説明」に違和感を感じ反発の感情が生まれることがあります。
「世の中にそんなうまい話があるはずない。怪しい人」という違和感です。
このような消費者の内在的な感情があるだけに、事前に適正な情報を提供すること、ボーナスプランの説明は誇張しないことが大切です。
また、違和感を取り除くことができるのは客観的事実の提供といわれています。(例えば、農場や本社・日本支社の施設、製品の種類や用途など)