カスタマーハラスメント(カスハラ)について |Compliance(コンプライアンス)

カスタマーハラスメント(カスハラ)について

 

2024年10月4日、顧客が従業員に理不尽な要求をする「カスタマーハラスメント(カスハラ)」を防止する東京都の条例が都議会本会議で可決・成立しました。これは全国初のカスハラ禁止条例で、来年4月に施行される予定です。

カスハラを行う人は、一般的には普通の人であり、自分の利益や不利益を避けようと行動する中で、その時の状況次第で抑制が効かなくなり、カスハラに至ることがあると考えられています。会員の皆様も、顧客からカスハラを受ける可能性があるかもしれませんし、自身がカスハラを行わないようにするためにも、カスハラに関する知識を深めていただきたいと思います。

 

カスハラ対策が必要な理由

カスハラが人の心や企業活動に与える影響は大きいと考えられます。

  1. 従業員が心身ともに疲弊する
    • 厚生労働省の調査によると、顧客からの迷惑行為に対し、67.6%の人が「怒り・不満・不安」を感じ、46.2%が「仕事への意欲が減退した」と答えています。
  2. 企業のイメージが悪化する
    • カスハラが発生すると、他のお客様に不快な思いをさせたり、サービスが行き届かなくなる恐れがあります。
  3. 安全配慮義務違反で罰則を受ける可能性がある
    • 従業員がカスハラを受け続ける状況を放置すると、労働契約法第5条の「従業員の安全に配慮する義務」に違反するとみなされる可能性があります。

 

カスハラとは

カスハラとは、顧客の要求が妥当性を欠いている、またはその要求を実現するための手段や態様が社会通念上不相当なものを指します。

2-1.「妥当性を欠く要求」

  • 欠陥商品の代金よりも高額な賠償を求める
  • 謝罪として土下座を求める
  • 従業員の解雇を要求する
  • 自社製品以外の商品やサービスを求める
  • 不当な返品を要求(返品期限を過ぎた商品の返品を要求する)
  • 実現不可能な要求(法律を変える、子どもを泣き止ませるなど)
  • すでに相応の対応をしているにもかかわらず、社長や企業トップとの面会を要求する

 

2-2.「社会通念上不相当な態様」

  • 長時間拘束型:顧客が従業員に長時間クレーム対応を強要し、業務に支障が出る
  • リピート型:繰り返し電話やメールで不合理な要求をしてくる
  • 暴言型:店頭や電話、メールなどで暴言を吐く
  • 暴力型:身体に接触したり、物を振り回したり、ドアを強く開け閉めする
  • 威迫脅迫型:従業員に危害を加えると予告して恐怖心を煽る
  • 店舗外拘束:自宅や特定の場所に呼びつけてクレームを行う
  • SNSでの誹謗中傷:ネット上に名誉を毀損する情報やプライバシーを侵害する情報を掲載する

 

会員のカスハラ対応

会員が顧客からカスハラを受けた場合、以下の対応を推奨します。

  1. 毅然と取引を停止する
    • 「営業自由の原則」に基づき、会員には取引顧客を選ぶ自由があります。取引を停止しても問題になることは基本的にありません。
  2. 一人で対応せず周囲に助けを求める
    • カスハラに対して一人で対応するのは困難です。周囲(他の会員、家族、知り合いなど)に助けを求めましょう。
  3. 身の危険を感じたら警察に連絡する
    • カスハラは犯罪ですので、ためらわず警察に連絡することを躊躇しないでください。
    • – 威力業務妨害罪(刑法234条):大声をあげて怖がらせる
    • – 強要罪(刑法223条):土下座を強要する
    • – 脅迫罪(刑法222条):生命や財産に危害を加えると脅す
    • – 不退去罪(刑法130条):居座りを続ける
    • – 信用毀損罪(刑法233条):虚偽の情報を流して信用を低下させる
    • など

 

まとめ

これまでカスハラが原因で刑事事件が発生していましたが、コロナ禍でその問題はさらに深刻化しています。厚生労働省はカスハラ対策マニュアルを提供していますが、国際的には遅れを取っているとの指摘もあります。そんな中、東京都は全国に先駆けてカスハラを直接取り締まる条例を制定し、体制を整えました。今後、カスハラ対応がより具体的に進み、防止策が徹底されることが期待されます。